パワハラ(パワーハラスメント)について

パワハラとは?

パワハラとは、パワーハラスメントの略で、職権などの権力(パワー)などを背景に、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人格と尊厳を侵害し、不法に精神的・肉体的な苦痛を与えることを言います(簡単に言うと、職権などの権力を盾にした嫌がらせやイジメです)。一般的には上司から部下への加害行為が多いのですが、例えば、パソコンが堪能な部下が、パソコンが苦手な上司に対して行う加害行為もパワハラに該当します。また、パワハラは同僚同士の間でも行われることがあります。

パワハラについては、真正面からとらえて対策を講じている法律がないのが現状です。

何がパワハラなのか、というのは「民法上の不法行為にあたるかどうか」という問題になります。つまり、「正当な職務の範囲内なのか」「社会的に相当なのか」などの観点から判断されると考えられます。仕事にかこつけた常識外れの度を越えた単なる嫌がらせ、イジメと言えるならば、パワハラになると考えられます。

パワハラは、社員の名誉や尊厳を傷つける言動であり、人権侵害です。

パワハラは、セクハラ同様に、他の従業員の士気の低下、会社の業績悪化や社会的信用の低下といった問題も生じることになります。

パワハラ被害の歴史は浅く、損害賠償訴訟の判例もあまりないのが実際のところですが、パワハラに対する問題意識は、一般的に高くなってきています。

 

パワハラの具体例

一人ではできそうにない仕事の押し付け
 そもそも達成不可能な目標を課して、達成できなかった場合に罵倒したりする。

ちょっとしたミスでも容赦のない、叱責、暴行、無視、冷遇など
 必要以上の執拗な説教をしたり、反省文の提出を強制したりする。

職場で無視、仕事を与えないなど

人格攻撃
 「お前はホントにダメな人間だな」「お前は才能が無いよ」「お前は三流大学出だからな」などと人格を攻撃することを言う。

性格や家族の悪口を言いふらす

目の前にいるのにメールで指示を出す

事務職社員に対して時間外の清掃、草むしり、ガラス拭きなど本来の業務と無関係な仕事を命じる

飲み会に来るよう強制する
 来ないと無視したり仕事をまわさなかったりする。

退職の強要

殴られる(殴る)

など

 

パワハラに対する法的責任の追及

(1)加害者の責任

民事責任として、不法行為に基づく損害賠償責任が発生します(慰謝料など)。

場合によっては刑事責任を検討します。具体的には、傷害罪、暴行罪、名誉毀損罪、侮辱罪などが考えられます。刑事責任を追及するには、告訴・告発をすることになります。

(2)会社の責任

使用者たる会社に対しては、不法行為責任(民法709条)、使用者責任(民法715条)、共同不法行為責任(民法719条)、債務不履行責任(民法415条)を追及していくことになります。

会社には、安全配慮義務(雇い入れている従業員が安全に業務に従事できるようにするべき義務)があります。また、社員が快適な環境で働けるようにするための職場環境配慮義務があります。これらを怠ると、債務不履行責任(民法415条)を問われることになります。

条文

(不法行為による損害賠償)
民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(使用者等の責任)
民法第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

(共同不法行為者の責任)
民法第719条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

(債務不履行による損害賠償)
民法第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

 

パワハラ解決の具体的対策

(1)証拠収集
 なんといっても証拠の有無が重要になってきますので、まずは証拠収集を行います。
 被害者のメモ(いつ、どこで、誰に、何をされたのか)相手との会話の録音記録目撃者や共通の被害者の証言(経験談など、※ただし、同僚などに相談するときは、信用できる口の堅い人に相談すべきです)医師の診断書、などを集めましょう。
 仮にパワハラの証拠を集め切れなくても、被害者の主張が詳細で一貫しており、逆に加害者の反論が曖昧で不自然なものであれば、裁判所にパワハラを認めてもらえる可能性もあります。

(2)社内の相談窓口を利用する
 会社が相談窓口を設置している場合は、そこに相談することが考えられます。しかし、まだまだパワハラに対する問題意識が低い(新しい問題)という実態がありますので、相談窓口を設置していない会社も多いです。
 社内の相談窓口に内容証明郵便を送付するのも有効かもしれません。

(3)社外の相談窓口を利用する
 都道府県の労働相談窓口などの第三者機関へ相談するのも良いでしょう。

(4)法律家に相談する(法的手続きを検討する)
 内容証明による警告証拠収集などのアドバイスをもらうことになると思います。どうしても改善のなされない場合、最終的には訴訟により、慰謝料の請求、社員たる地位の確認などを請求していくことになるでしょう。

 

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パワハラの証拠(立証)

できるだけ証拠を収集しておく必要があります(最終的に裁判上で争うこととなった場合には、証拠がモノを言います)。裁判にはならなくとも、証拠があることによって有利な立場に立てます。集められるものはどんどん集め(集めるようにします)、保存できるものは確実に保存しておくようにします。

パワハラ(パワーハラスメント)は、証拠不十分であったり、被害者の言葉に「信憑性がない」と判断された場合、敗訴してしまうこともあります。

証拠の例

自分で書いたメモ(加害者の発言や行動)
 被害者本人の主張も具体的なものであれば、裁判所は「そんなに具体的なことを言えるということは実際に被害があったに違いない」という認定をする場合があります。
録音・記録した会話・電話など
第三者に相談した場合はその第三者に書いてもらったメモ(もらっておく)
 第三者は会社からの報復を恐れて、供述を翻すおそれがあります。
第三者の証言を第三者自身に書いてもらったメモ
精神的・肉体的に被害を受けた場合は、医師に診断してもらった医師の診断書
被害を受けた時に衣服が破かれた場合などはその衣服など
「~行為はやめなさい。やめない場合は然るべき手段(法的手段)をとる」などの内容の内容証明郵便(出しておく)

などを集めるようにします(保存できるものは確実に保存しておくようにします)。

 

証拠がなくても、もちろん慰謝料の請求はできますし、勝訴できることもあります。また、裁判をしなくても、内容証明郵便での請求で解決する場合(案件)もあります。

 

パワハワ関連判例(参考)

最高裁判決昭和62年10月16日
 除草作業・ガラス拭きを強要したことについて、慰謝料30万円の支払いを命じた。

最高裁判決平成8年2月23日
 就業規則の書き写し(作業)を強要したことについて、上司と会社の不法行為責任が認められた。

横浜地裁平成11年9月21日
 長時間に及ぶ炎天下での除草作業について、懲罰的要素が強いと認められた。

パワハラ(パワーハラスメント)は、許されない人権侵害であり、あってはなりませんし、許されません。裁判をしなくても、内容証明郵便での警告で解決する場合(案件)もありますので、パワハラ行為で被害を受けてお困りの方は、是非、当事務所(センター)までご相談ください。

 

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