セクハラ(セクシュアルハラスメント)について

セクハラとは?

セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、相手の意に反する性的な言動により、その言動に対する対応によって、仕事をするうえで不利益を与えたり、職場環境を悪化させることを言いますが、男女雇用機会均等法の指針(平成18年厚生労働省告示第615号)では、「職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること(対価型)又は当該性的な言動により、労働者の就業環境が害されること(環境型)」と定義しています。

簡単に言うと、相手が望まない不快になるような性的言動(話や行動)です。この範囲はとても広く、強姦、強制わいせつ等刑法に抵触するものから、事務所の机の上にヌードのカレンダーを置いておくなど、さまざまな事柄が含まれます。

不利益だけでなく、利益を与えられた場合も含まれます(対価型)。

セクハラは、女性だけの問題ではなく、女性から男性、同性から同性へのセクハラもあります(男性でも被害者になり得ます)。

セクハラ被害は、職場だけのものでなく、大学等の学校での被害もあります。

セクハラは人権侵害になります。

セカンドハラスメントとは、セクハラの苦情申立てをしたことによる二次被害のことを言います。会社の相談窓口にセクハラの被害を訴えたことによって、その担当者又は会社から二次的な嫌がらせを受けることがあります。

「職場において」・・・
 「職場」とは労働者が業務を遂行する場所のことで、事務所・オフィスなど通常就業する場所以外における性的言動であっても、業務を遂行する場所におけるものであれば、「職場において」と言えます。また、勤務時間終了後であっても、実質的に職場の延長線上における場所での性的言動であれば「職場」にあたります。つまり、「仕事がらみの場所」におけるものなら、そのほとんどが「職場において」にあたると考えられます。

(例)取引先出張先慰安旅行等の旅行先送別会・忘年会などの飲み会接待に利用する飲食店顧客の自宅、など

「性的な言動」・・・
 相手が望まない不快になるような性的な話や行動です。被害者が性的な言動を不快だと感じれば、加害者が「悪気は無かった」「冗談である」「あいさつ代わり」などと主張したとしても、それはセクハラになります。つまり、受けた側の主観が重視されるのです(主観的な苦痛・不快感など)。加害者側の主観はセクハラの成立に関係がなく、たとえセクハラをしようとする意思が無くても、セクハラが成立する可能性があります。

(例)性的な冗談を言う不必要なボディータッチ食事・デート等への執拗な誘い個人的な性的体験を話したり聞いたりする職場で意図的に性的な噂話などをふりまくわいせつ画像などの配布や掲示性的関係を強要する性的関係の拒絶を理由とした降格や賃金減額セクハラを受け入れたことにより昇格させる強制わいせつ行為や強姦、など

 

事業主(会社・雇用主)のセクハラ防止義務(男女雇用機会均等法、指針)

事業主のセクハラ防止義務を定めた法律としては、男女雇用機会均等法11条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置)があります。この11条は、事業主(会社・雇用主)に対し、職場における性的な言動によって労働者がその労働条件に不利益を受けたり、就業環境が害されないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために雇用管理上必要な措置を講じなければならない、と定めています。具体的には、指針(平成18年厚生労働省告示第615号)が定められています。

男女雇用機会均等法の指針(必要な措置)
① 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発・・・(例)就業規則・掲示などでセクハラ行為を規定し防止を徹底
② 相談・苦情への対応・・・(例)相談・苦情処理窓口設置
③ 事後の迅速かつ適切な対応

条文

(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置)
男女雇用機会均等法第11条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
 厚生労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が配慮すべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
 省略

仮にセクハラが起きてしまった場合は、男女雇用機会均等法11条により、「事業主の責任」が認められやすくなります。セクハラを防止するための必要な措置を講じなければならない義務があるにもかかわらず、現実にセクハラが起きてしまったのですから、加害者本人のみならず「事業主さんも悪かったんじゃないの?」という事実上の推定が働くことになります。これがあることによって、事業主を訴えるための訴訟を起こした場合には、原告が勝訴するためにしなければならないことが減って有利になります。

 

セクハラに対する法的責任の追及

(1)加害者の責任

民事責任として、不法行為に基づく損害賠償責任(精神的・身体的・財産的)が発生します(慰謝料もここに含まれます)。

程度によっては刑事責任が課される場合があります。具体的には、名誉毀損罪、侮辱罪、強姦罪、強制わいせつ罪、ストーカー行為等規制法違反、軽犯罪法上ののぞき行為やつきまとい行為、条例違反などが考えられます。刑事責任を追及するには、告訴・告発をすることになります。

(2)会社の責任

使用者たる会社に対しては、使用者責任(民法715条)や共同不法行為責任(民法719条)を追及できます。会社は仕事上で社員が第三者に与えた損害を賠償する責任があります。また、連帯して責任を負います。

条文

(使用者等の責任)
民法第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

(共同不法行為者の責任)
民法第719条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

職場環境配慮義務違反や男女平等取扱義務違反を理由として、債務不履行責任を追及することも可能な場合があります(民法415条)。

条文

(債務不履行による損害賠償)
民法第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

(3)労働法上の問題

 セクハラ被害を申告した場合、会社(事業主)の中には、「セクハラの事実を隠蔽するため」に、被害者を解雇したり、自己都合退職を強要したりする場合があります。このような正当な理由のない解雇については、解雇権の濫用として解雇が無効となります。また、自己都合退職についても、それが自己の意志に基づくものではなく、詐欺又は脅迫による場合には、退職の意思表示を取消すことができます。

 

セクハラ解決の具体的対策

(1)証拠収集
 なんといっても証拠の有無が重要になってきますので、まずは証拠収集を行います。
 被害者のメモや日記セクハラ会話の録音携帯電話の着信履歴メール目撃者や共通の被害者の証言(経験談など、※ただし、同僚などに相談するときは、信用できる口の堅い人に相談すべきです)医師の診断書加害者からの手紙やプレゼント、などを集めましょう。
 仮にセクハラの証拠を集め切れなくても、被害者の主張が詳細で一貫しており、逆に加害者の反論が曖昧で不自然なものであれば、裁判所にセクハラを認めてもらえる可能性もあります。

(2)拒絶の意思表示をする
 口で言ってもあまり効果は無いかもしれませんので、加害者に対しハッキリとセクハラに対する不快感を示し、セクハラを拒絶する旨(セクハラをやめて欲しい旨)の内容証明郵便を送付します。場合によっては会社にも内容証明郵便を送付します。後の慰謝料請求や会社に対する訴えの際にも、「セクハラを拒絶する旨(セクハラをやめて欲しい旨)の内容証明郵便を送付しているにもかかわらず、やめてくれなかった」という証拠が残ることになります。また、「被害者は嫌がってなかった」などの加害者の言い逃れを防げますし、セクハラが放置されたり、さらに拡大しないようにする意味でも、内容証明郵便を使います。
 内容証明郵便で拒絶の意思表示をした途端にセクハラがすぐに止むこともあります。

(3)社内の相談窓口を利用する
 加害者と直接やり取りするのがためらわれるのであれば、上司やセクハラ防止窓口、労働組合に相談したり、これらの相談窓口にセクハラの存在を内容証明郵便で知らせることも検討します。
 なお、会社にはセクハラの相談窓口を設置し適切に対処する義務があります(男女雇用機会均等法)。もし、これが設置されていない場合は、厚生労働大臣から助言・指導・勧告が行われることになります。もし、会社に、この相談窓口が設置されていないのであれば、会社に指導等をするよう、都道府県労働局雇用均等室に求めてみましょう。

(4)社外の相談窓口を利用する
 都道府県労働局雇用均等室や総合労働相談コーナーに相談して(女性相談員の希望可能です)、労働局長の助言・指導や、紛争調整委員会による「あっせん」「調停」を受けることもできます。また、各自治体の女性センターや人権センターなどでも相談窓口を設置しているところもありますので、このようなところを利用するという方法もあります。

(5)法律家に相談する(法的手続きを検討する)
 相談窓口に相談するのと並行して、あるいはその方法をとらない場合でも、法律家に相談することは有益だと思います。証拠をとっておける段階で専門家の意見を聞いておくということにもなりますので、有効な方法だと言えます。後々有利な立場に立つためのアドバイスを得ることができます。
 また、民事責任や刑事責任を追及するための法的手続きを検討します。

 

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セクハラの証拠(立証)

できるだけ証拠を収集しておく必要があります(最終的に裁判上で争うこととなった場合には、証拠がモノを言います)。裁判にはならなくとも、証拠があることによって有利な立場に立てます。集められるものはどんどん集め(集めるようにします)、保存できるものは確実に保存しておくようにします。

セクハラ(セクシュアルハラスメント)は、証拠不十分であったり、被害者の言葉に「信憑性がない」と判断された場合、敗訴してしまうこともあります。

証拠の例

自分で書いたメモ(加害者の発言や行動)
 被害者本人の主張も具体的なものであれば、裁判所は「そんなに具体的なことを言えるということは実際に被害があったに違いない」という認定をする場合があります。
録音・保存した電話・メール・郵便物など
出張記録やレストラン等のレシートなど
 セクハラを受けた場所・時間を示すものです。
第三者に相談した場合はその第三者に書いてもらったメモ(もらっておく)
 第三者は会社からの報復を恐れて、供述を翻すおそれがあります。
第三者の証言を第三者自身に書いてもらったメモ
精神的・肉体的に被害を受けた場合は、医師に診断してもらった医師の診断書
被害を受けた時に衣服が破かれた場合などはその衣服など
「~行為はやめなさい。やめない場合は然るべき手段(法的手段)をとる」などの内容の内容証明郵便(出しておく)

などを集めるようにします(保存できるものは確実に保存しておくようにします)。

 

証拠がなくても、もちろん慰謝料の請求はできますし、勝訴できることもあります。また、裁判をしなくても、内容証明郵便での請求で解決する場合(案件)も多いです。

 

セクハラ判例の一部(セクハラに対する慰謝料請求が認められた判例)

静岡地裁判決平成2年12月20日・・・上司と女性社員
 上司たる地位を利用して、女性社員を食事に誘い、その後車中でキスをするなど執拗なセクハラを行った。女性社員は精神的打撃を受け、身体に変調をきたすなどして、退職に追い込まれた。

認められた慰謝料額→慰謝料100万円と弁護士費用10万円

大阪地裁判決平成9年9月25日・・・女性教諭(中学校)と女性教諭(中学校)
 職員室内で同僚に対し、「(彼女は)欲求不満だから生徒につらくあたる」、二次会で「彼女に男さえいれば、性的に満たされるのに」などと性的な嫌がらせの発言を繰り返した。

認められた慰謝料額→慰謝料50万円

千葉地裁判決平成10年3月26日・・・社長と女性社員
 社長は、社内でパソコンのわいせつ画面を見せたり、後ろから抱きついたり、胸や腰を触ったり、スカートの中に手を入れたりした。また、居酒屋で酒を飲ませてモーテルに連れ込み、強引に性交渉に及んだ。女性社員は退職に追い込まれた。

認められた慰謝料額→慰謝料300万円

大阪地裁判決平成10年12月21日・・・上司と女性社員
 上司が部下に対して上司たる地位を利用してわいせつ行為(上司が休日に開催した飲み会の二次会のカラオケボックス内で手の甲や顔にキスをしたり、スカートをめくろうとしたり、ブラウスのボタンを外そうとしたり、抱き寄せようとした)を行い、上司と会社に対して責任が認められた。

認められた慰謝料額→慰謝料100万円と弁護士費用10万円(上司、会社の連帯責任)

和歌山地裁判決平成10年3月11日・・・取締役ら4人と女性社員
 会社の取締役ら4名が女性社員に対し、日常的に「おばん、おばあ、くそばば」などと呼び、性的に露骨な表現でからかったり、バインダーで強く頭を殴ったりしたことが共同不法行為とされ、慰謝料請求が認められた。

認められた慰謝料額→慰謝料各100万円と弁護士費用各10万円

東京地裁判決平成16年7月29・・・前社長と女性社員
 前社長は、(社長当時)直属の部下だった女性に対し、自宅やカラオケ店、出張先のホテルなどで体を触った。また、取引業者との交渉の際、同席した女性に「胸を触っていいから」との不適切な発言をした。

認められた慰謝料額慰謝料170万円

 

セクハラ(セクシュアルハラスメント)は、許されない人権侵害であり、あってはなりませんし、許されません。裁判をしなくても、内容証明郵便での請求で解決する場合(案件)も多いので、セクハラ行為で被害を受けておられる方は、是非、当事務所(センター)までご相談ください。

 

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